【見解?】 2014.5.12(月)
福島県が「美味しんぼ」に対する見解をホームページで発表。
反発する気持ちは分からないではないし、「農地等の除染」「米の全量全袋検査などの徹底したモニタリング検査」などで努力しているのは分かるが、肝心の、実際にこういう事例が果たしてあったのかなかったのか、調査した経緯と結果が述べられておらず、他の批判や記事等に対する反論に言及した形跡もない。何よりも事実確認を前提とした反論であるべきではないか。 たかが一雑誌の一原稿に対し、おどろおどろしく「国民及び世界に対しても本県への不安感を増長させる」などと大げさに言うことが,かえって事態を大ごとにしているのではないか? 県はやるべきことをやっていればいいのだと思う。 と、つぶやいてみた。
週刊ビッグコミックスピリッツ「美味しんぼ」に関する本県の対応について
平成26年5月12日 福島県
週刊ビッグコミックスピリッツ4月28日発売号の「美味しんぼ」の内容につきまして、県内外の多くの皆様から、出版社に対して県として対応すべきであるとの多くのお声をいただいております。
「美味しんぼ」において、作中に登場する特定の個人の見解が、あたかも福島の現状そのものであるような印象を読者に与えかねない表現があり、県内外の多くの皆様に不安と困惑を生じさせており、県としても大変危惧しております。
県では、これまで全ての県民を対象とした「県民健康調査」、「甲状腺検査」や「ホールボディカウンター」等により、県民の皆様の健康面への不安に応える取組を実施してまいりました。 また、県産農林水産物については、「農地等の除染」「米の全量全袋検査などの徹底したモニタリング検査」等により安全性の確保と、正しい理解の向上に取り組み、市場関係者や消費者の理解が進むとともに、観光分野においても、観光客入込数が回復傾向にあるなど、ようやく本県への風評も和らぎつつある状況に至ったところです。
このような中、「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号の「美味しんぼ」の表現は、福島県民そして本県を応援いただいている国内外の方々の心情を全く顧みず、深く傷つけるものであり、また、本県の農林水産業や観光業など各産業分野へ深刻な経済的損失を与えかねず、さらには国民及び世界に対しても本県への不安感を増長させるものであり、総じて本県への風評被害を助長するものとして断固容認できず、極めて遺憾であります。
「美味しんぼ」及び株式会社小学館が出版する出版物に関して、本県の見解を含めて、国、市町村、生産者団体、放射線医学を専門とする医療機関や大学等高等教育機関、国連を始めとする国際的な科学機関などから、科学的知見や多様な意見・見解を、丁寧かつ綿密に取材・調査された上で、偏らない客観的な事実を基にした表現とするよう強く申し入れております。
また、これまでの経過を次のとおり併せてご報告させていただきます。
4月30日に出版社より本県に対して、「[5月19日発売号]において、漫画の誌面では掲載しきれなかった様々な意見を紹介する検証記事を掲載する」として、次の3点に関する取材又は文書回答を求める依頼があり、さらに、5月1日には[5月12日発売号]に掲載する「美味しんぼ」原稿の送付がありました。
(出版社から取材依頼のあった事項) ・「美味しんぼ」に掲載したものと同様の症状を訴えられる方を、他に知っているか。 ・鼻血や疲労感の症状に、放射線被曝(※依頼原文では「被爆」)の影響が、要因として考えられるかどうか。 ・「美味しんぼ」の内容についての意見
本県においては、上記に対して5月7日に出版社あて以下のとおり県の見解を示し、申し入れしております。
■出版社へ申し入れした内容 ・「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号における 「美味しんぼ」について [PDFファイル/143KB] ※下記参照
今後も本県の正確な情報の発信に努めながら、復興に向けて全力で取り組んでまいります。
「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号における 「美味しんぼ」について
平成26年5月7日 福島県
福島県においては、東日本大震災により地震や津波の被害に遭われた方々、東京電 力福島第一原子力発電所事故により避難されている方々など、県内外において、今な お多くの県民が避難生活を余儀なくされている状況にあります。
原発事故による県民の健康面への影響に関しては、国、市町村、医療関係機関、原 子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)等の国際機関との連携の下、全て の県民を対象とした県民健康調査、甲状腺検査やホールボディカウンター等により、 放射性物質による健康面への影響を早期発見する検査体制を徹底しており、これまで にこれらの検査の実施を通して、原発事故により放出された放射性物質に起因する直接的な健康被害が確認された例はありません。
また、原発事故に伴い、本県の農林水産物は出荷停止等の措置がなされ、生産現場 においては経済的損失やブランドイメージの低下など多大な損害を受け、さらには風 評による販売価格の低迷が続いておりましたが、これまで国、県、市町村、生産団体、 学術機関等が連携・協力しながら、農地等の除染、放射性物質の農産物等への吸収抑 制対策の取組、米の全量全袋検査を始めとする県産農林水産物の徹底した検査の実施 などにより、現在は国が定める基準値内の安全・安心な農林水産物のみが市場に出荷 されております。
併せて、本県は国や市町村等と連携し、県内外の消費者等を対象としたリスクコミ ュニケーションなどの正しい理解の向上に取り組むとともに、出荷される農林水産物 についても、安全性がしっかりと確保されていることから、本県への風評も和らぐな ど市場関係者や消費者の理解が進んでまいりました。
このように、県のみならず、県民や関係団体の皆様が一丸となって復興に向かう最 中、国内外に多数の読者を有し、社会的影響力の大きい「週刊ビッグコミックスピリ ッツ」4月28日及び5月12日発売号の「美味しんぼ」において、放射線の影響に より鼻血が出るといった表現、また、「除染をしても汚染は取れない」「福島はもう 住めない、安全には暮らせない」など、作中に登場する特定の個人の見解があたかも 福島の現状そのものであるような印象を読者に与えかねない表現があり大変危惧して おります。
これらの表現は、福島県民そして本県を応援いただいている国内外の方々の心情を 全く顧みず、殊更に深く傷つけるものであり、また、回復途上にある本県の農林水産 業や観光業など各産業分野へ深刻な経済的損失を与えかねず、さらには国民及び世界 に対しても本県への不安感を増長させるものであり、総じて本県への風評を助長する ものとして断固容認できるものでなく、極めて遺憾であります。
「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号の「美味しん ぼ」において表現されている主な内容について本県の見解をお示しします。まず、登 場人物が放射線の影響により鼻血が出るとありますが、高線量の被ばくがあった場合、 血小板減少により、日常的に刺激を受けやすい歯茎や腸管からの出血や皮下出血とと もに鼻血が起こりますが、県内外に避難されている方も含め一般住民は、このような 急性放射線症が出るような被ばくはしておりません。また、原子放射線の影響に関す る国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書(4 月 2 日公表)においても、今回の事故によ る被ばくは、こうした影響が現れる線量からははるかに低いとされております。
また、「除染をしても汚染は取れない」との表現がありますが、本県では、安全・ 安心な暮らしを取り戻すため、国、市町村、県が連携して、除染の推進による環境回 復に最優先で取り組んでおります。その結果、平成23年8月末から平成25年8月 末までの2年間で除染を実施した施設等において、除染や物理的減衰などにより、6 0%以上の着実な空間線量率の低減が見られています。除染の進捗やインフラの整備 などにより、避難区域の一部解除もなされています。
さらに、「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんてできない」との表現 がありますが、世界保健機構(WHO)の公表では「被ばく線量が最も高かった地域の外 側では、福島県においても、がんの罹患のリスクの増加は小さく、がん発生の自然の ばらつきを越える発生は予測されない」としており、また、原子放射線の影響に関す る国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書においても、福島第一原発事故の放射線被ばく による急性の健康影響はなく、また一般住民や大多数の原発従事者において、将来に も被ばくによる健康影響の増加は予想されない、との影響評価が示されています。
「美味しんぼ」及び株式会社小学館が出版する出版物に関して、本県の見解を含め て、国、市町村、生産者団体、放射線医学を専門とする医療機関や大学等高等教育機 関、国連を始めとする国際的な科学機関などから、科学的知見や多様な意見・見解を、 丁寧かつ綿密に取材・調査された上で、偏らない客観的な事実を基にした表現とされ ますよう、強く申し入れます。